お店のオープン日を教えてください。また過去にペット関連のお仕事はされていましたか
店長 武藤さん:昨年9月1日に犬のほいくえんLEMON HEARTがオープンしました。
こちらに勤める前は、専門学校を卒業してすぐ、レトリバー専門店でトレーニングに携わり、子犬の世話やしつけを行っていました。主に、オーナーが希望する形でトレーニングを施し、飼い主が理想とする行動が身に付いた犬を提供する業務を担当していました。このように、成犬や子犬のトレーニング経験を積まれ、さまざまな環境でのトレーニング方法を学んできました。その後の1年間は、保護施設で保護犬の支援活動に従事しており、飼い主様となる里親に基本的な指導を行う役割を担っていました。そこで働いている間に前職の求人を見つけ、ドッグトレーナーとしてがっつり働きたいと思い、転職しました。
前職ではペット保育園やペットサロンを含む総合施設に勤務しており、ドッグトレーナーとして活動していました。その施設は小規模で1店舗のみの運営でしたが、当初アルバイトとして働き始め、その後4年間正社員として働いて、今回の会社に至ります。
犬のほいくえんLEMON HEARTとつけた理由
店長 武藤さん:「犬のほいくえんLEMON HEART」という名前は私ではなく、弊社の社長である鈴木が名付けました。社長の愛犬であるビーグルの「LEMON(レモン)」ちゃんが由来です。このLEMONちゃんには、体の一部にハート型の模様があるように見えるとのことから、「LEMON HEART」としたようです。正直なところ、私や他のスタッフも「うーん、言われてみればそう見えなくもないかな?」といった感じなのですが、おそらくそこから発想を得て、この名前が生まれたのだと思います。
武藤さんが店長を任された理由とインタビューを引き受けた理由について
店長 武藤さん:最初から店長として入社したわけではなく、一般社員として入社し、オープン後に店長へ昇進されました。昨年6月頃から本社で準備に関わり、宣伝活動や利用規約の整備を進め、9月のオープン後に店長の話が持ち上がりました。その背景には、同業での経験や強い責任感、臨機応変な対応が得意であるという資質が評価されたことが大きな理由だと思います。
今回のインタビューに関しては、最終的な判断を鈴木社長が行い、「ぜひお願いしたい」とのことでしたのでお引き受けしました。
ペットオーナー様とのコミュニケーションで特に大切にしていること、店長として学んだこと
店長 武藤さん:飼い主様との関わりでは、わんちゃんとの接し方だけでなく、飼い主様の生活スタイルやお悩みについても深く理解することを大切にしています。普段の会話の中でさりげなく飼い主様の癖やわんちゃんとの関係を伺いながら、うまくコミュニケーションを広げていくことを心がけています。
スタッフには、飼い主様の温度感や話しやすさを感じ取ることを伝え、自然に笑顔になっていただけるよう明るく話しかけています。飼い主様が思わず話してしまうような心地よい空間を提供することが大切で、私自身もその点を重視して取り組んでいます。
店長として学んだこと、最終決断は鈴木社長が下すのですが、現場での判断は私が行うため、迅速で的確な決断力が求められています。最終判断を仰ぐ際も、いくつかの選択肢を絞り込んで分かりやすく提示するのが私の役目だと感じています。そのため、優柔不断にならないよう努めています。
また、スタッフの育成は現在も悩んでいる課題の一つです。コミュニケーションの取り方やスタッフ間の関係性について、どの程度関与すべきかといった面でも試行錯誤しています。前職では見えていなかった、飼い主様やお預かりするわんちゃん、スタッフ全員を広い視野で見ることが求められる責任の重さを、改めて感じる貴重な経験になっています。
次世代へ伝えたいことはありますか
店長 武藤さん:私が特に次世代に伝えたいことは「清潔さ」の重要性です。多くの方が意外に思うかもしれませんが、施設を清潔に保つことは、わんちゃんたちにとっても、その飼い主様にとっても非常に大切な要素です。実際、「清潔感があるから安心して通わせられる」「施設がきれいだから信頼できる」といった声をいただくことも多くありますし、衛生面での評価は口コミにも大きく影響します。
私自身も専門学校で厳しく清掃の指導を受け、掃除は日常のルーティンとなりました。また、細部に至るまで徹底的に清掃することが基本でした。たとえば、人間用のトイレも曇りや汚れがないようにこまめに拭くなどの徹底管理を行い、それが当たり前の感覚として身につきました。さらに、施設全体の清掃リストを作成し、日々の業務の一環として、わんちゃんの周囲や飼い主様が利用する場所も常に清潔に保つよう努めています。
オープン当初から通ってくださる地域の方からも「君がいる時はトイレがきれい」との評価をいただき、そこから信頼が築かれてきました。施設が清潔であることが、飼い主様やわんちゃんにとって安心感につながるのだと実感しています。
お客様の中で難しい対応される場合もあるとき、どのような対応をされていますか。
店長 武藤さん:特に心配性の飼い主様に対しては、丁寧な対応が必要です。例えば、トレーニングの内容以外でも「こうしてほしい」「ああしてほしい」と細かいご要望が多く、長年通っていることから特別扱いを求められる方がいらっしゃいます。その際、他の飼い主様と同じ対応を心掛けつつ、その方には少し特別感を持って接するようにしています。また、会計についても、「次回分も前払いしたい」といったご要望がある場合、予めキャンセルや返金の対応について丁寧に説明し、トラブル防止を図っています。このようなコミュニケーションを大切にし、「なぜ早く言ってくれなかったのか」とならないように心掛けています。
最近、保護犬を迎えた飼い主様がいらっしゃいました。繁殖犬として育てられたため、5歳になるフレンチブルドッグは他のわんちゃんと関わる経験がほとんどなく、お散歩もおすわりも苦手でした。しかし、当園で他のわんちゃんと楽しく遊ぶ姿を見て、飼い主様は感激して涙を流されました。スタッフ全員が女性であることも影響したのか、その子もリラックスでき、安心して通い続けてくださっています。
また、ハーネスがうまくつけられないというご相談もありました。飼い主様のご希望に沿い、慎重に対応するつもりでしたが、特にわんちゃんが怖がる様子もなかったため、思い切ってハーネスをつけると、スムーズにできました。飼い主様にもその様子をお伝えし、「心配がわんちゃんに伝わっていたのでは」と気付いていただけたことは良かったと思います。
1年間経過しましたが、どのくらいのわんちゃんが来店されていますか。
店長 武藤さん:現在、当店には約300頭のわんちゃんが来店しています。今月だけで20頭以上の新規の方にご利用いただいており、ここ最近特に増加しています。その理由としてはGoogleの口コミの影響が大きいと感じています。飼い主様には詳細はお伺いしませんが、カウンセリングシートのアンケート欄に「どのように当店を知ったか」を尋ねたところ、多くがインターネット検索やTikTok、Googleの口コミを通じて知ったと回答しています。
当初、オープン前の2ヶ月間にスタッフが公園でビラを配布し、無料のおやつをお渡しするなどの宣伝活動を行いました。その効果もあり、開業半年ほどはその影響で来店された方が多かったですが、4月や5月頃から口コミをしていただけるようになり、6月からは安定して新規の飼い主様が増加しました。特に8月、9月は新規の利用者が急増しており、2月や3月に比べて顕著に多くなっています。
リピーターについては、トレーニング利用が約50頭ほど、一時預かりやホテル利用も含めると約100頭となります。頻繁ではありませんが、定期的にご来店いただくコアなリピーターのお客様もいらっしゃいます。
再来店してくださるお客様とのエピソード
店長 武藤さん:当店の保育園トレーニングでは、毎回のトレーニング内容を日誌として記録しています。この日誌には、トレーニング中の写真や動画に加えて、解説を丁寧に作り込んでおり、飼い主様には非常に好評です。「自分の愛犬が丁寧に見てもらえている」と感じていただけることで信頼関係が生まれ、「もっと見てもらいたい」「またお願いしたい」といった形でリピートにつながっています。
また、飼い主様は、わんちゃんが当店で楽しんでいる姿を見られることに大きな喜びを感じてくださっており、問題行動の改善と同様に、「うちの子がこんな表情をするんだ」「こんな行動をするんだ」と新しい発見に喜んでいただけることが多いです。そのため、「楽しんでいるので通わせたい」という声をたくさんいただいています。
日誌や動画編集(SNS関連)の取り組みについて
店長 武藤さん:スタッフ全員で取り組んでいます。データはLINEで共有しており、専用のシステムを使用することで情報が集約され、お客様も随時確認が可能です。このシステムを利用することで、飼い主様と交換日記のようにコメントを通してやりとりができ、日々の様子を共有しています。連絡も基本的にLINEで行っており、直接伝えにくいことやお迎えの担当者変更などもLINEでやりとりすることが多いです。千葉や横浜など遠方から来店されるお客様もおり、最初の1か月は頻繁に、その後も定期的に来てくださる方がいます。遠くからの見守りを感じることができて、非常にありがたく思っています。
当店では主にInstagramとTikTokに力を入れており、たまにYouTubeも活用していますが、現在は新規の飼い主様対応や動画編集業務が多忙なため、YouTubeの更新は一時的にストップしています。Instagramは毎日投稿しており、日常の様子やその日のワンちゃんの写真・動画をシェアしています。一方、TikTokでは主にトレーニング内容を中心に、視聴者にとって有料コンテンツとしても価値があるような内容を発信しています。
緊急対応の体制についてお伺いしたいのですが、例えばわんちゃんの具合が悪くなったなど、どのような対応をされていますか?
店長 武藤さん:当店では、ワンちゃんが体調不良や怪我をした場合、まずは飼い主様へご連絡を差し上げます。ご連絡が取れない場合は、緊急連絡先へ連絡を行い、状況を説明し、動物病院へ連れていくかどうかの指示を仰ぎます。緊急性が高い場合には、近隣の病院(2軒あります)に向かいながら飼い主様と連絡を取り続けます。これまでに2回、実際に病院対応を行った経験があります。
また、災害対策としても半年ほど前から取り組みを進めており、本社からの支援でワンちゃん用の飲料水やご飯の備蓄も管理しています。災害対応の手順をマニュアル化してスタッフに周知し、利用規約にも緊急対応に関する記載を盛り込んでいます。避難のための道具も備え、災害時に建物外へ出るのが危険な場合は、2階に備蓄を集めて避難対応をする体制を整えています。
私自身もチワワを飼っており、安心して預けられる施設であることの重要性を実感しながら取り組んでいます。
ペット業界をより良くしていきたい思いなどはありますか。
店長 武藤さん:私が理想とするペット業界の在り方として、例えば動物病院や葬儀社と連携することで、ペットが亡くなった場合の適切なサポートがすぐに提供できるような体制を整えることが重要だと考えています。ペットショップにおいても、購入後のアフターケアが整っていることで、飼い主様が安心して迎え入れられるようになると思います。
また、前職では飼えなくなったワンちゃんを保護施設に入れる際、その施設が終生飼養できるかどうかが問題となるケースがありました。私が提案したいのは、例えば当施設を通っていたワンちゃんが、飼い主様が急に亡くなった場合に、引き取り手がいない際に私たちがそのワンちゃんを受け入れる仕組みです。知っている人たちの中で過ごせることは、ワンちゃんにとっても安心できる環境となりますし、最期まで見守り、納骨もできるような支援体制があれば良いのではと考えています。
今後はどのように仕事で活躍していきたいですか。
店長 武藤さん:今後は、店舗全体をまとめる役割をしながら、自分自身の視野もさらに広げていきたいと思っています。トレーニング業務の中でも日々多くの学びがあり、InstagramやYouTubeなどで他のトレーニング方法を研究し、新しいアイデアを実践することに挑戦していきたいです。マネジメント業務と現場のプレイヤーとしての両方を両立させ、どちらにも力を注ぎたいと考えています。
スタッフに対しては、一人ひとりの適性に応じた業務を割り当て、それぞれが得意分野を積み上げられるようサポートしています。理想は、スタッフ全員が私と同じようなスキルや経験を持ち、どのような環境でも活躍できる状態になることです。仮にスタッフが卒業して別の職場に移ったとしても、ここで学んだことを活かしてほしいと思います。
また、トレーニングだけでなく、接客やパソコンのスキル(WordやExcelなど)も教え、店舗の管理業務を各自に分担してもらうことで、責任感を持って仕事に取り組んでもらえる環境づくりを進めています。最終的には、私が全体を見守りながら、店舗運営を支えていけたらと思っています。
最後に伝えたいこと
店長 武藤さん:飼い主様の皆様には、ぜひわんちゃんのことをたくさん悩み、深く考えてほしいと思います。吠え癖や食糞といった問題に対して、「この子はこうだから仕方ない」と諦めてしまう方が少なくありません。しかし、そのような行動も原因をしっかりと探り、時間をかけて改善していくことが可能です。飼い主様ご自身が、わんちゃんの行動の背景を理解し、その子に必要なサポートを一緒に考え、日々の生活を見つめ直していくことが大切だと考えています。
わんちゃんにとっては、飼い主様に自分の気持ちを伝えたくて行動をしていることが多いですが、それが適切に伝わらず、問題行動として定着してしまうこともあります。私たちの施設では、魔法のように一瞬で問題を解決することはできませんが、飼い主様と一緒に悩みやトレーニングの方法を共有し、少しずつ改善に取り組んでいくことが基本方針です。どうぞ諦めずに、わんちゃんと向き合う時間を大切にしてください。
施設情報
犬のほいくえんLEMON HEART
〒108-0071 東京都港区白金台3-16-36
03-6277-0944
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