ペットシッター(intopet)を始めようと思ったきっかけを教えてください。
代表社員 清野さん:2人でビジネスを立ち上げようといろいろ探している過程で、役所や保護団体が行っているペットの保護活動を見て、思った以上に多くの動物が保護されていることに驚きました。
当時、実家では犬を飼っていたのですが、遠方の病院で母親の看病が必要になり、朝晩の犬のお散歩のため実家と病院の往復に時間を使う日々が始まりました。
もう少し母親と一緒にいてあげたいと思い色々探している時にペットシッターという仕事を知り、お願いした所、長い時間母親と一緒にいてあげる事が出来ました。
その経験からペットや飼い主様の助けになるペットシッターという仕事に興味を持ちました。
また、この仕事を広めればペットを飼いやすい環境が整って、里親を探している動物たちも家族に迎えてもらいやすくなるのではとも感じました。
社会に貢献できる仕事をしたかったこともあり、私の方から一緒に仕事やりませんかと声をかけて2人で相談して2012年頃に事業をスタートさせ、intopetを2013年に法人化しました。
ペットシッターのお仕事をしていく中で大変だったことはありますか。
代表社員 清野さん:ペットシッターはお客様のご自宅で行う仕事なので、女性シッターが多かったんですよね。私たちは男性二人で始めたこともあり、信頼を得るまでがとても大変でした。
実績が積み重なってからは依頼も増えましたが、最初は少しハンデを感じましたね。
共同代表 内田さん:ご家族間で意思疎通が取れていないと難しいこともあります。
例えば、ペットのご飯の量に対する認識のズレや、シッター利用に賛成する方と反対する方がいるなど、様々なケースがあるのですが、そんな時はこちらも少し悩まされることはありますね。
あと、介護状態のワンちゃんを預かるときはやはり心配でドキドキします。過去のご依頼で、運動会に家族全員で参加したいから、寝たきりのワンちゃんを3時間見守ってほしいという依頼がありました。
やること自体は少ないのですが、呼吸をしているか、お腹が動いているかどうかを見守っているだけでもやはり神経を使いましたね。途中で「大丈夫ですよ」と飼い主様に連絡を入れたりしながら、常に緊張感を持って対応していました。
こういったケースでは残念ながら亡くなってしまう場合もありますが、その際はより慎重に対応します。
ペットシッターの仕事をしていて良かったなと感じるのはどんな時ですか。
代表社員 清野さん:いつも押入れに隠れて姿を見せない人見知りの猫ちゃんがいて、お世話をする時はそっと必要なことだけして、すぐお部屋を出ていたんですね。でもある日、ご飯の準備中にふと後ろに気配を感じて振り返ると、その猫ちゃんが出てきてコロンと転がっていて、それから毎回顔を見せてくれるようになったんです。
1年かけて「この人は大丈夫だ」ってわかってくれたみたいで、あの瞬間は本当に嬉しかったですね。
共同代表 内田さん:飼い主さんが亡くなってしまってご家族がペットを引き取るといったケースがあるんですが、必ずしもそのご家族が動物好きとは限りませんよね。
過去に動物が苦手なご家族がすぐ保健所に連絡すると仰っていたのを聞いていても立ってもいられず「里親が見つかるまでちょっと待ってください。お世話して、必要があれば運搬もするので」と説得して、その後無事引き取ってくれる人を見つけました。
あの時は、自分たちが何もしていなかったらそのまま亡くなっちゃう命を救って、少しかもしれないけど力になれるなっていう実感があったんで、それはすごく嬉しかったです。
代表社員 清野さん:あとは起業したての頃に「この仕事を始めてくれてありがとう」と言われたことがあります。当時はペットシッターというサービスがまだあまり知られていなかった時期で、留守中に他人を入れることに不安を持つ方も多かったんです。
でもそのお客様が「あなたたちが来てくれるなら安心だし、やっと2人で出かけられる」と感謝してくださって、すごく感動しました。10年以上、ご夫婦で一緒に出かけることができなかったそうで「絶対にやめないでね」とお声がけいただいて、ペットシッターという仕事がどれだけ必要とされているかを実感した瞬間でしたね。
お客さんとコミュニケーションをとる際に大切にしていることはありますか。
共同代表 内田さん:他のシッターさんと比べて、飼い主様から「どうしてそんなに丁寧に対応してくれるんですか?」と聞かれることはあります。お話を伺ってみると、過去に依頼した他のシッターさんからぞんざいな態度を取られたという方も結構いらっしゃるんですよ。
なので、私たちは丁寧に対応するという当たり前のことをきちんとやるように心がけています。
代表社員 清野さん:シッターは多くのペットに関わるので、飼い主様より経験が多くなるのは自然なことなのですが、飼い主様の伝えたいことを聞かずに「これはこう」とご自身の経験からくる意見を押し付けてしまう方も中にはいらっしゃいます。
我々はまず飼い主様の希望や伝えたいことをしっかりお伺いして、さまざまな個性を持つ子とその飼い主様のご希望に沿った対応をするということを大切にして、できる限り普段通りの環境で過ごしてもらえるように意識していますね。
その強みが現在の店舗数に繋がっていると思うのですが、どのようにして店舗を増やしてこられたのでしょうか。
共同代表 内田さん:もともと遠方からのご依頼も多くいただいていて、どうしても対応できずにお断りすることもあったんです。「出かけるからお願いしたい。ちょっと遠いけど来てくれないか」と言われても、八王子や宇都宮などにはなかなか行けないという状況でした。
同時に、地方の方から「シッターとして働きたい」というお声もあったので、わざわざこちらに来なくても皆さんの地域でペットのお世話に困っている方がたくさんいるから、そこで始めてくださいと伝えていました。ですが、ノウハウもなく1人で始めるのは難しいですよね。ウェブページや保険の準備、トラブル対応の方法など様々なハードルがあって、なかなか始められないという方も多かったんです。
それを受けて「うちでサポートしますよ」という形になりましたね。
代表社員 清野さん:直営店は軌道に乗っていましたが、フランチャイズはゼロからのスタートでした。そのため当初は、共感してもらえる方を見つけるのが本当に大変でしたね。
最初は希望されるお一人お一人のために遠方まで足を運び、説明会を開いていました。単なる説明会ではなく、信頼関係を築くための話し合いの場にもなり、少しずつ賛同者が増えてきました。
グループとしての体裁が整った後は、オンラインでの説明会でも加盟いただけるようになったんです。今ではオンラインでのやり取りが主流ですね。
ただ、ビジネスとしてお金儲けだけを考えている方は、うちとは合わない場合が多いです。ペットが好きであることが大前提なので、そこの意識が違う方と一緒にやっていくことは難しいですね。
共同代表 内田さん:動物が好きだからといってビジネス感覚が全くないのは厳しいですし、逆にペットを道具のように扱っていて厳しいんですよね。そのバランスを見極めるのが一つの段階です。
また、うちは研修をしっかり行っているので、研修の中で「あれ?」と思うことがあれば、納得できるまで繰り返し研修を重ねています。他の会社では研修の回数が決まっているところもありますが、うちは回数を決めず、シッターさんも我々も「大丈夫だ」と思える段階で卒業してもらっています。
資格や過去の実績も大事ではありますが、何よりもお世話がしっかりできるのか、お客様に信頼していただけるのか、というところを重要視しています。
ペットシッターやこの業界をよりよくするために、どのような変化が必要だと思いますか。
代表社員 清野さん:やっぱり「質を上げる」というのが大切だと思っています。思った以上に、基本的なことができていないシッターさんが多いんですよね。
このグループを始めた理由の一つとして、ある程度質の高いシッターさんを増やしたいという思いがあります。基本的なサービスの質を高めて、お客様の話をしっかり聞けるシッターが増えることで、全体のクオリティも上がっていくと考えています。
随分認知はされてきましたが、もう少しペットシッターの認知度が上がれば、シッターを頼みたいという人も増えて、依頼しやすくなると思います。そうすれば、ペットシッターを続けられずに廃業してしまう人も減り、ペットを安心して預けられる世の中になるんじゃないかなと思っています。
認知度を上げるために行なっていることはありますか。
共同代表 内田さん:主にホームページやSNSでの発信ですね。
現在、ホームページはすべて自分たちで運営していますが、グループ全体でリニューアルする話が進んでいます。ちょうど業者が決定して作業に着手したところなので、完成は来年の初め頃になりそうですね。
SNSはインスタグラムなどを活用しています。ペットユーザー向けに役立つ情報や、開業希望者向けにペットシッターとして働くメリットだったり、ペットシッターに向いているのにその可能性に気づいていない方の掘り起こしに繋がるような内容を発信しています。
緊急時の対応についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
共同代表 内田さん:ちょっとノウハウの部分になってしまうので細かくはお伝えできませんが、病院に連れていくなどの対応におけるプロセスがきちんと明確化されて、それぞれの店舗やシッターさんに共有されています。
代表社員 清野さん:過去の例ですが、猫2匹のお世話をしていた際、シッターが内1匹の体調の異変に気づいたことがありました。すぐさま飼い主様にご連絡をして急いで病院へ連れて行きましたが、もういつ何があってもおかしくない状態でした。その後、夜中に新幹線で戻られた飼い主様から「シッターさんが気付いてくれたお陰で最期を見届けることができた」とお礼の言葉をいただいたことがありました。
こうした経験は、グループのシッターが成長できるよう研修に組み込むなどして共有していますね。
次世代に伝えたいペットシッターの魅力はありますか。
共同代表 内田さん:釣り好きな人が魚を釣って楽しいと感じるのと同じように、ワンちゃんや猫ちゃんなど動物好きな人が、毎日「夕焼けがきれいだな」とか「朝の空気が気持ちいいな」と感じながら散歩をしたりお世話をしているというのが日常なので、本当に毎日楽しいと思います。
代表社員 清野さん:ペットシッターは感謝される仕事ですね。ワンちゃんや猫ちゃんたちがリラックスしている姿を見ると「喜んでくれてるな」と実感しますし、以前ホテルに預けた際は普段と異なる環境のストレスからかボロボロで帰ってきたのに、今回自宅でシッターに依頼をしたらそのようなこともなく、普段通りに過ごしている姿を見た飼い主さんが感動してくださることもあります。
そういう反応をいただけると「やっててよかったな」と思います。お客様から「大切な家族をケアしてくれた」という深い感謝をいただけるので、やりがいがありますね。
ペットシッターの仕事において、介護の需要は今後増加すると思われますか。
共同代表 内田さん:この10年間で介護の需要が圧倒的に増えているので、今後も増え続けていくと思います。
シッターの業務範囲にも限界はあるので医療行為はできませんが、できる限り飼い主様のご要望に応えられるよう努めています。シッターにとっては、ペットの死亡リスクというものが大きな不安要素だと思うので、若い子しか預からないシッターやペットホテルがあるのも事実です。
我々はそういった理由ではお断りせず、終末期のペットでも対応します。これは、飼い主様の「死ぬ間際に1人にさせたくない」という思いを尊重しているからです。
我々も当初は介護サービスを提供していませんでしたが、長く続く依頼の中で自然と介護が必要になるケースが増えてきました。オムツを使うようになったり、自分で食事ができなくなる子のケアは、年齢と共に避けられない問題ですからね。
実際に、遠方から「近くのシッターが介護に対応していない」という理由で依頼のご連絡をいただくこともあります。距離的にお伺いが難しい場合は、まず近隣のシッターに相談するようにお勧めし、具体的な介護の内容やオムツ交換の方法を伝えることで、シッターが対応できる可能性を提案しています。
今はグループの店舗が増えていることもあり、安心して紹介できるシッターのネットワークも広がって、より多くの飼い主様に対応できるようになってきているので、本当にありがたいと感じています。
今後、会社をどのように発展にさせていきたいですか?
共同代表 内田さん:多くのシッターさんが一人でたくさん対応していて、休みがほとんど取れていない状態です。店舗を構えていないので一般的には忙しい印象が少ないかもしれませんが、実際話を聞くと「8月に一度も休みが取れなかった」というシッターさんも結構います。
忙しい時期だと1日で10件ぐらい依頼が来たりしますよ。1件の依頼で5、6日間の依頼があった時は忙しいですね。最長だと3ヶ月間くらい訪問したこともあります。
「毎週出勤がある日に来てほしい」や「事情があって8時間様子を見ていてほしい」など、平日土日関係なく色々な依頼をいただくので、正直なところシッターの数が足りていないんです。
なので、一つのエリアに複数の店舗があって、シッター同士がカバーし合って休みが取れる環境にしていきたいなとは思っています。
代表社員 清野さん:グループの今後としては、店舗数を増やしてペットに関する法律や業界へ声を届けられるようにしていきたいですね。
例えば、介護を行う際の投薬に関して、現行の法律ではシッターが投薬を行うことは禁止されているのですが「飼い主さんが許可しているならシッターが投薬を行なっても良いのでは」という獣医さんもいらっしゃいます。
また、以前は資格取得だけで始めることができたシッターの開業も、今は半年ペットショップでの実務経験を積む必要があるのですが、当社の研修や知識をつけていけば経験の有無にかかわらず、質の高いシッターの育成が可能だと思っています。
こうしたグループの成長によってペットシッターの地位が向上し、業界全体が働きやすくなるのではと期待しています。そのためにも、店舗数を拡大していきたいですね。
最後に、ペットシッターの利用を検討している方や、ペットシッターとして起業を目指している方へお伝えしたいことはありますか。
共同代表 内田さん:ペットシッターを利用される方は、飼い主さん全体の約3割ほどです。自宅に他人を入れることに抵抗があってなかなか踏み切れない方も多いと思いますが、まず一度試してみていただきたいですね。
例えば介護が必要なワンちゃんがいてなかなか外出できずに困っていた方が、ペットシッターを利用して負担が軽減されたというお話も伺っています。
なので、初回訪問でシッターと会ってから利用するかどうか判断してもらえば良いかなと思います。「初回訪問をしたら必ず利用しないといけない」と思われる方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
気軽にシッターとお話ししてもらって、その後にどうするか決めていただいても大丈夫ですよということをお伝えしたいですね。
代表社員 清野さん:ペットホテルの料金と比較して判断される方もいらっしゃると思いますが、ペットシッターの価値というのは「いつも通り自宅でリラックスして過ごせる」という点だと考えています。なので価格で単純に比較せず、どのような環境で過ごしてほしいかといった部分も判断材料にしていただければいいかなと。
うちでは多頭飼いの追加料金も発生しないので、多頭飼いの方はホテルに預けるよりも利用しやすい面はあるかと思います。
あと、ペットシッターとしての開業を考えている方にお伝えしたいのは、ペット好きな方であれば、そのスキルを人々の喜びに活かしてほしいということです。自分たちはペットが大好きで、楽しんで仕事をしています。
ペットシッターはとてもやりがいのある仕事ですので、興味がある方はぜひ挑戦してみてほしいですね。
施設情報
ペットシッターintopetグループ
〒270-2231 千葉県松戸市稔台7-28-5
0120-949-221/050-5846-5623
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